華胥の幽夢(ゆめ)―十二国記 (講談社文庫)
四つの短編集です。
才の話以外はリアルタイムなんだけど、場所とスポットを当てられた人物が違っているため本編とはまったく違う雰囲気の作品になっています。
本編が新幹線の駅に例えると短編はローカル線の駅みたいなかんじ。
これまで作り上げてきた世界が形になっているから短編が生きてくるんだと思う。
一番心に残ったのは「華胥」でした。
たとえ抱いている理想が正しいものであったとしても、実現できるとは限らない。
本人の能力という厳しい現実が存在すると共に言い訳の効かない世界が描かれていた。
人の弱さと脆さを垣間見た気がしました。
しかし止まってしまった本編はいつ動き出すのでしょうね。
華胥の幽夢(ゆめ)―十二国記 (講談社X文庫―ホワイトハート)
蔵書の整理を余儀なくされ、迷った挙句、本書と「図南の翼」だけを残した。
十二国記の世界は、一種の理想郷だ。まず他国に攻め込むと、理由がいかに正しかろうと、王とその補佐たる麒麟は命を落とす。これなら対外戦争は起こらない。王は世襲ではなく、麒麟に「王たる適性がある」と選ばれた者が王座につくが、王としての道を誤る傾向を見せると、麒麟みずからが病んで警告を発する。まさに理想の世界だ。
子どもは、天に持つ資格があると認められた夫婦にだけ授かり、それも木に実る。だから親に「うんでもらった」ではなく「もいでもらった」なのだ。当然、虐待はない。ただ、王が道を誤って不在となると国じゅうに妖魔がはびこり、親を亡くす子どもは出てくるので、決して生きていくのに楽な世界ではない。このあたりの容赦のなさが大好きだ。
シリーズ唯一の短編集である本書は、そんな世界観を余すところなく描き出した傑作選。どの話も面白くて、どこか哀しい。