
満鉄調査部事件の真相―新発見史料が語る「知の集団」の見果てぬ夢
本書は長いことその詳細が明らかとなっていなかった「満鉄調査部事件」につき、中国で発見された新資料に基づきその真相を解明しようとした書である。満州の地に新たな国家を創造しようと躍起になっていた関東軍が当時は三井物産と満鉄くらいにしかなかったシンクタンク機能、すなわち調査部に目をつけたのは当然のことであろう。満鉄調査部の内包していたマルクス主義的合理主義と関東軍の目指した効率的な国造りは当初、その親和性が高かったと言って良い。しかし戦局の進展に伴い、異端分子に対する軍部の許容度は低くなり、大量検挙事件へと結びつく。非常にエキサイティングな内容ながら、読み通すには満州国・思想史などに予備知識が必要ではある。
伊福部昭 映画音楽選集
伊福部昭氏の代表的な映画音楽が、極めてクリアな音質で楽しめる盤です。
音質があまりよくないサントラ盤にも魅力はありますが、やはりクリアな音
で楽しみたいというのが正直なところで、この盤はおすすめできます。
氏の最初の映画音楽の「銀嶺の果て」は、60年ほど前の作品ですが、
至極クリアな音が楽しめます。
また、未使用音楽なども魅力的で、伊福部節がいたるところで楽しめ、
聴き終わると「やっぱり伊福部だよね!」と氏の偉大さに改めて気付くことに
なるかと思います。
伊福部昭の芸術9 伊福部昭音楽祭
実際の演奏会にも行ってまいりました。
銀嶺の果てのタイトル音楽や、アメノウズメの舞を生オケで聴けるだけでも、ファンであれば
買い、ではあります。
しかしタプカーラは・・・やはり本名氏の振るそれとはどうも個人的にもソリが合わない。
個々の芸術(音楽)の感性・解釈の違い、と言ってしまえばそれまでなんですが、どうしても
彼の振るタプカーラは「毎回」何か違う、と感じてしまいます。
第一楽章では、不必要な遅さに苛立ち、第二楽章では、あってはならないと言っても良い
テンポ。(明らかに速すぎる)。 クライマックスの第三楽章は、これまた逆に「無意味に」
煽って速すぎる、と感じました。ただでさえ演奏が大変な楽章なのに、あんなスピードで
やっては(案の定)終盤で管楽器がついていけず。
あの楽章のバーバリックな爆発は、オーケストラとして「乱れの無い」大乱舞でなければ
ならない筈。これでは却って演奏に集中出来ません。
個人的には解釈を間違えているとしか思えませんでした。
特撮大行進(だっけ?)の曲も、アレンジの元が吹奏楽版なので、原曲とは微妙に違う
箇所もあり(ロンドインブーレスクに近い解釈)、これも好みが分かれる所です。
伊福部昭:全歌曲
去る2月8日に作曲家が亡くなったので、あわてて聴
いてみる気になりました。柳田国男や内藤湖南というか
つての大知識人に比肩される伊福部と歌手で初めて博
士となった藍川のジョイントとなれば、自ずと内容が学
究的になるのでしょうか。聴いていて、少し近寄り難い
ものを感じました。
それはともかく、この機会に合わせて読んだ伊福部の
『音楽入門』(1951)では、音楽の原型は歌曲とされて
います。その意味では楽器と歌唱の協働を極めた「オ
ホーツクの海」は、このアルバムでふたりが達した頂点
かもしれません。
全体を聴き終えて、『ギルヤーク族の古き吟誦歌』以
下の前半の三歌曲集がなじみやすかったのですが、
『サハリン島先住民の三つの揺籃歌』の「ウルプリ
ヤーヤー」などのテンポのよい曲に意外なリズム感が
感じられて驚きました。
それにしても、伊福部の「民族」へのこだわりには、
改めて目を見張る思いがします。反面、その固有の音
楽観を結実させる作曲では、妥協を許さぬ独創的な姿
勢を貫いているように見えます。その手法は20世紀
音楽の国際的水準からみても、先駆的なものだったと
言えるのではないでしょうか。